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大晦日の31日。ウィンザーホテルを早々にチェックアウトして空港に向かう。そのメルボルンの空港で大チョンボをしてしまった。
今回国内線の重量制限(20sまで)の関係で機内持ち込みにしたバッグがあった。いつもはライターやナイフ類は預け用のキャリーバッグに入れているのだが、その持ち込みバッグに入れてあった事をコロッと忘れてしまっていたのだった。お世話になった方から戴いた、25年も愛用していた大切なアーミーナイフを没収されてしまった(泣)。
ちなみにこの機内持ち込みのバッグにも重量制限がある。対応スタッフにもよるだろうけど、「7s以内か?」と聞かれたらオーバーしていても「Yes!」と答えればいい。もしも計量させられたらその時は諦めるしかないが。アーミーナイフは取られてしまったけれど、私たちの持ち込み荷物、10sは優に超えていたのだった。
メルボルンからパースへ飛びそこから双発のプロペラ機に乗り換えてエスペランスへと向かう。パースまでは約4時間、パースからエスペまでは1時間40分ほどだ。エスペランスの空港を出ると、タクシーが2台停まっていた。「乗せてくれるかい?」と聞いたら、知人が到着していないか確認してくるからちょっと待てと言う。地元民優先らしい。 |
空港から逗留ホテルのコンフォートインまでは15分ほど。ホテルというより長期滞在型のモーテルのようなここは、各部屋が独立したコテージ風になっていて使い勝っては良かった。
チェックインし、さっそく散歩に出かけた。ホテル前の道路を渡れば海岸だ。トボトボと名物のタンカージェティ目指して歩く。
この桟橋(タンカージェティ)は、もともとは大型船が停泊できる水深にまで橋げたを延ばしたことで、こんなに長くなった。しかし今は使用されてなく、釣り人とダイバーと観光客が来るだけだ。桟橋のたもとには、これまた名物になったアザラシが、いつも砂浜にドテッと寝ている。
ここに行った最初の日は、この大きなアザラシ一頭だけだったけど、その後に行ったときは子供のアザラシもエサをねだりにやって来ていた。
このタンカジェティー、下の写真を見てもお分かりの通り、もの凄く長い。突端まで行ってみたかったけれどあまりの暑さにヤメ! しかし数日後に6.5oのウェットスーツを着、重い機材を担いでここを2往復することになるのだが……。 |
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数年前にこのジェティー周辺でホオジロザメが回遊し、ここらあたりはダイビングはもちろん遊泳も禁止になっていた。今ではホオジロの姿も見えなくなったそうだが、誰も泳いではいなかった。大丈夫なのかぁ?潜っても。
エスペランスの町は狭い。町中を道路が2本ほど貫いていてレストランも数件しかない。大きなスーパーマーケットが一つとガソリンスタンド、あとは貸別荘だ。この界隈はキャンピングカーで来てる人達が殆どで、ここをベースにして各地へキャンプに行っているのだろう。ホテルでも食事は出来たけれど、大晦日の晩に奮発して特大サーロインステーキをミディアムで注文したらウェルダンどころか炭にして出してきおった(当然ノーチャージだけど)。頭に来たので以降は地元の人のお勧めの店で食事した。グースレストラン(下左写真)とボナパルトシーフードレストラン(下右写真)。どちらもホテルよりは美味しかったし、グースで再びサーロインを注文したらベストの焼きで出てきた。
ちなみに私たちがこのエスペランス行きを計画していた時にはまともなホテルはコンフォートインしか見つけられなかったけれど、ベストウェスタンというホテルも綺麗で、レストランはいつも満員だった。こっちのホテルの方が食事は良いかもしれない。 |
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さて翌朝。ブルブル震えながら初日の出を見て、ダイビングの準備をする。9時。ダイブオーシャンの高倉さんが迎えに来てくれた。今日はラッキーベイに潜るという。
エスペランスからは約1時間ほど。直線道路の向こうに小高い山が見える。その山を越えた瞬間、思わず「おぉ〜!」と感嘆の声が漏れた。眼前に真っ白な砂浜が弧を描いて横たわっている。その砂浜が見事に真っ白なのだ。その白と海の青さのコントラストが猛烈に美しい。
息を飲むような景色とはいうけれど、呼吸するのも忘れるほどに美しかった。こんな景色に出会ったのはこれで3度目だ。1度目はニューカレドニアのウベア、2度目はクック諸島のアイツタキだった。しばらく丘の上でその美しさを満喫した。その時の写真がこのページのトップ、タイトルになっているもの。ワイドレンズを持っていなかったので動画で撮影したものを右に埋め込んでおきます。
このラッキーベイ、多くのキャンパーがやって来ていた。そのキャンパーがエサをあげるためかおこぼれを漁るためか、カンガルーや大トカゲが人間を恐れるどころかすり寄ってくる。 |
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キャンプ場でもあるからトイレなども設置はされているけど、決して綺麗ではない。
4輪駆動車ならば浜辺まで降りて行って、そこで機材のセッティングが出来るのだけれど、使用車はフツーのハイエース。丘の上に駐車し、そこで機材のセッティングを行い、階段を降りていく。これがまたキツイ! なにせ着てるウェットスーツは6.5o、それにフードベストを併用。水温が低いので潜ればこれでも冷たく感じるが気温は40度を超えているのだ。波打ち際に到着し頃には息が上がり汗でぐずぐず状態。間違ってもドライでは潜れんゾ。
メルボルンでもそうだったけれど、このエスペランスも南風が吹くとグンと気温が下がる。昼間でもTシャツ&短パンでは震え上がる。しかし、それが北風になると大陸で熱せられた空気が届き、猛烈な暑さになる。この日、気温は44度を超えていた。東京だったら死人も出るような気温だけれど、こちらは湿度が極端に低いので日影に入れば暑さはさほどでもない。
2本潜ってこの日は終了となった。町からの遠征ダイブなので事前に予約したタンク本数しか持っていけないようなのだ。後で知った事だけれどタンクチャージはショップ自前ではないので予約制になっていた。 |
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翌日1月2日(水曜)。
この日はラッキーベイの隣に広がるウォートンビーチに向かった。エスペの町からは約70分ほど。景観の美しさはラッキーベイよりこちらの方が上かもしれない。まるで雪のように砂が真っ白なのだ。雪の積もった南洋の浜辺という表現がピッタリくる。砂の粒子がとても細かい。歩くとキシキシと、これまた雪を踏みつけたような音が鳴る。まるで鳴き砂の浜のようだ。聞けばこの砂はいわゆる石が細かくなって出来た砂ではなくて、ケイ素なんだそうな。「ケイ素って何だっけ?」と独りごちたら隣を歩いていたダイビングスタッフが「シリコンですね」。
ここでも丘の上で機材セッティングして浜辺まで降りていくのだけれど、このケイ素の砂がもの凄く細かい。オクトパスの中やカメラのスイッチ部に砂が入らないように気遣いながら歩いていくのは、体力的にキツい上に精神的にもかなりしんどかった。
海の色を見ると南国のそれのようで、サンゴ礁でもありそうだけれどサンゴは欠片もなく海中には海草類がビッシリと茂っている。
ユラユラと揺れる海草をジッと見ていると、船酔いならぬ海中酔いしそうになる。見ているうちに海草が揺らぐのではなくて自分が揺れているような錯覚に陥るのだ。 |
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このユラユラと揺れる海草の中に目的のリーフィーシードラゴンはいる。3本潜って、ただひたすらリーフィーシードラゴンを捜したけれど見つけられず、結局は親戚のウィーディーシードラゴンにしか逢えなかった。
絶対にリーフィーシードラゴンに会いたいなら、エスペランスに住んでいる坂上治郎さんにガイドをお願いするのがベストだろう。自力発見も夢見て私はパースに常駐するダイブオーシャンズにガイドを依頼した。若いスタッフが3人、随分と気を遣ってくれたけど、海中を知り尽くしていなければ見つけることは至難だ。しかし、こればかりは運もあるから致し方ないと思うのだ。このダイブオーシャンズのあまり良くない評判も何度か耳(目)にしたけれど、スタッフは皆、一生懸命だった。まだガイディングに慣れていないのと、年に数度しかエスペの海を潜っていないのだ。ピンポイントのガイドを要求する方が無理ってもんだろうと思う。目的の魚に逢えないのは残念だけれど、楽しく安全に潜れればそれでいい。
海中も地味だけど魚たちも地味だ。リーフィーシードラゴンやウィーディーシードラゴン、オールドワイフやブルーデビルなど変わったサカナが多いけれど、相対的にジミ〜な魚が多い。そして固有種も多い。自宅の魚類図鑑に載ってる魚はほとんど居なかった。 |
さてダイビング最終日の3日(木曜)。今日は到着した日に散策したタンカージェティに潜る。ジェティそばの駐車場でセッティング。ロクハン&フードベストでウェイトは8s。タンクを背負ってカメラ機材を抱えてジェティ先端までの1q近い距離を歩く。まるで学生時代の体育会でしごかれているような気分。途中にベンチがあるので、そこで何度か休憩しつつ突端に辿り着いた。飲み水も持ってくればよかったと後悔する。サウナに入ったようで早く海中に潜りたい。
ジェティは途中が崩壊していて、その残骸が海底に放置されている。その残骸に沿って最先端部分へと進んでいく。透明度はあまり良くない。8m〜12m程度か。そのためか海中にところどころ目印用のロープが張ってあった。先端部分ではエスペランス名物のオールドワイフが群れていた。ワイドレンズで撮ったら結構な迫力写真が撮れたんだがなぁ。
さて。このジェティで2本を潜り通算7本を潜ってエスペランスでのダイビングを終了した。地味な魚が多いので、潜っていてワクワクするような海ではなかったけれど、どの魚も他所では会うことが叶わない魚とあって、面白かった。しかし帰国して魚の名前を調べるのに苦労した。結局、帰国後もダイブオーシャンのお世話になってしまったのだった。 |
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1月4日(金曜)。朝7時にホテルを出発する。ダイブオーシャンズのスタッフと一緒に車で陸路をパースまで戻ることにした。同乗させてもらうのだけれど、同乗料金は取られた。ほぼ航空運賃片道料金と一緒
(-_-;) まぁしかし、途中で数カ所観光地へ立ち寄りをお願いしたので致し方無いか。
エスペを出てまずはピンクレイクに立ち寄った。湖がピンク色に染まるのでその名が付いたのだけれど、ちっともピンクで無い。南風が猛烈に冷たいゾ。空もドンヨリとして北の荒野に来た気分。このピンクレイクはここに住むプランクトンの死骸が湖面に浮き、それがピンク色なんだそうだが、この日は沈んでしまったらしい。生臭い匂いが漂っていた。
ひたすら走る。エスペからパースまでは800qほどもある。走行時間およそ10時間のドライブだ。ピンクレイクの次に目指すのはウェーブロック。10年前にパースに来たときは、このウェーブロックに行こうかピナクルに行こうかと迷い、結局ピナクルに行ったのだった(正解だった)。パースからわざわざ走ってきて見るまでのものではなかった。それでもウェーブロック上からの景色は雄大で見応えあったけれど。ちなみにウェーブロックはエスペランスからの方が近い。ウェーブロックの次はHippo's Yawnカバのあくび岩へ行った(下の写真)。 |
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この800qのドライブ中、途中で町らしき所は2カ所しか通過しなかった。その間、擦れ違った車も10台ほど。草原と丘しか目には入らず、まったく何もないのだった。それでも時折道路には「横断者に注意」の標識が。民家もないところで、カンガルー以外にいったい誰が道路を横断するんだ? むしろ「カンガルーの飛び出し注意」だろうと思うけど、注意も何も突然に草むらから飛び出してくるカンガルーを避けることは不可能だな。轢き飛ばされたと思わしきカンガルーの死体を何度か道路脇に見つけた。
夕刻、パースに到着した。翌朝は7時35分のフライトだ。空港に至近のホテルを取ったけれど、それでもホテルを朝5時には出なくてはならない。パースを徘徊することもなく夕食を摂って早々に寝ることにする。
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【後記】エスペランスの海は、初めて見るような海中世界で楽しめた。しかし水温の低いのは如何ともし難く、ナンチャッテリゾートダイバーの私たちには少々厳しい海域ではあったが、チャンスがあったらまた潜ってみたいと思う。次回にはリーフィーシードラゴンに逢えることを夢見て。
2013年3月・記
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