モエン島やデニュブロン島の、陸上には未だ至るところに60年前の戦争の傷跡が残り、海底には軍艦やゼロ戦が沈むトラック諸島。そのインパクトの強さに心も重くなっていたのに、この君島環礁を訪れ「あー、やっぱりここはのどかな南の島っだたんだ」と実感した。
椰子の木が生い茂り、真っ白な砂浜には足跡さえない。シュノーケリングでもサメやウミガメに会えるほど、魚影も濃かった。
モエン島から船で南下すること約90分の、トラック環礁の外に位置する、ここ君島環礁からは戦禍を感じることも無く、チュークでやっとリゾート気分が味わえた。
ボートが徐々に小島に近づきはじめ、船上から眺める限りは、白い貝殻や珊瑚がうちあげられた白砂が連なる、パラダイスのような島に見えたけれど、いざ上陸して驚いた。
島の砂浜の一角には、今まさに孵化しそうな鳥の卵や、たった今生まれたばかりの雛たちがいっぱい! 人が上陸する事が無いので堂々と子育てが出来るのだろう。
聞くところによると、理由は聞きそびれたが、この君島環礁は、今まで上陸が禁止されていたそうだ。
私たちが訪れる前日に、上陸が解禁されたとのことだった。だから、鳥たちにすれば、私たち人間の上陸は驚天動地の出来事だったに違いない。親鳥に寄り添う雛、打ち上げられたサンゴやペットボトルの陰に身をひそめる雛、親鳥が持ち帰る餌を口を開けて待つ雛…。海の中ばかりか、陸上にも小さな命がたくさん!  中には波にさらわれたのか、海上で溺れそうになっている雛もいた。いずれサカナの餌になってしまうのだろう。