馴染みのショップで無駄話をしていたら、「マルタは良いとこらしいねぇ」と店主が言う。「何が良いの?」と聞き返すと、とにかく町が素敵なんだそうな。特に何が良いのか分からなかったけれど、気持ちはすでにマルタへと飛んでいた。
この時点で自分が持っていたマルタに関する知識と言ったら、トランペット曲の『マルタ島の砂』と青の洞窟、そして騎士団がいたというくらい。こんな程度の予備知識で予定組んじゃっていいのか? とも思ったけれど、良いという人がいるんだから行ってみようじゃないか!と、2014年の夏休みはマルタ行きに決定した。
渡航手配を完了し、日々の業務に追われること数ヶ月。気がつくと出発2週間前になっていた。
一ヶ月前に送った現地ダイビングショップからの返信も返ってきていない。慌てて再度のメールを送ったら、要望通りの日本語でのメールが返信されてきた。これで一つ心配は消えた。しかし今回はダイビングにはあまり期待をしておらず、観光中心でいこうと思っていたので、それから慌てて見所を調べ始めた。すると出てくる出てくる。観たい箇所がゾロゾロと出てくるではないか。どう考えても日数が足らん。あきらめて、とりあえず主要な観光名所だけを廻る予定とした。
経路はドバイ経由でマルタまで。行きは羽田発の深夜便、帰りは成田着となる。この方がドバイでの乗り継ぎ時間に無駄が無かったからだ。飛行機もお初のエミレーツ航空でちょっと楽しみ。
出発当日、マレーシア航空機がウクライナ上空で爆撃され墜落したとのニュースが飛び込んできた。なんか嫌~な感じ。
エミレーツ航空は食事が良かった。機内サービスとしてはガサツ感は否めなかったけど、食事が美味しいというのは結構重要なファクターだと思う。
離陸後の軽食を食してすぐに就寝。朝食(時間的には昼食)で起こされ、ドバイに到着。
ドバイ空港はただただひたすらにデカかった。ものすごく広いのだけれどシンガポール・チャンギ空港のように空港内移動の乗り物がほとんど無いから、トランジット移動に時間がかかる。
実は私にとってヨーロッパは初めて。日本から一番西に行ったのがモルジブで、それを遙かに西へと飛ぶことになる。距離を調べたら、日本からドバイまでが約9000㎞、ドバイ・マルタ間が約4500㎞だった。それぞれの飛行時間は日本・ドバイが約11時間、ドバイ・マルタ間が5時間。乗り継ぎの待ち時間も含めれば、ほとんど一日がかりの移動である。いやはや、遠いゾ。しかし往路は羽田の深夜発だったのでひたすら寝るだけ。
寝心地の悪ささえ我慢すれば寝ている間に運んでくれる。まぁ、その寝心地の悪さが最大の難点ではあるのだけれど。
マルタに到着。この国では入国の際に入国カード記載する必要が無い。パスポート提示だけでOKだった。
いつもは待たされる手荷物もすぐに出てきて、税関審査も並ぶこと無くすんなり通り、「トントン拍子でこりゃ早めにホテルに入れるな」と思っていたのに、空港を出るとピックアップ・サービスが来ていない。同じ飛行機に乗ってきた乗客はみんないなくなり、私たちともう一組の日本人観光客だけが空港に取り残された。
   
ピックアップ・サービスを無視して勝手にタクシーでホテルに向かおうかとも考えたけど、帰りのピックアップもあることなので待つことにした。すると30分以上も待たされてやって来た。やっては来たものの、今度は肝心の車がまだ到着しないという。この日、ダイビングショップにチェックダイブを予約しているのに。車を待つ間、指定時間に間に合うかとヒヤヒヤものだった。

ダイビングショップは宿泊するウェスティン・ドラゴナーラ・リゾートに隣接するダイブワイズ。ダイビングショップに触れたので、先にマルタのダイビングに関して書いておこう。
 
マルタ島周辺の海域は、透明度が高いことで有名だそうだ。透明度が高いということはプランクトンが少ないことでもあり、結果、魚影は濃くない。ダイビングは沈船やケーブなどの地形を楽しむのがメインだ。私が潜ったときはそんなに透明度は良くなかった(ログ参照)。
ダイブワイズはホテル併設であることもあってか、とにかくゲストがやたら多かった。ゲストが多いのに段取りが非常に悪く、毎回出発時はドタバタした。向かうダイビングポイントによって同じボートダイブでもスタイルが異なるので戸惑った。聞けば教えてくれるだろうけど、事前の説明が少ないのでかなり戸惑った。もしもダイビングを主体にするなら、他のショップにした方が無難。
 
ウェスティン・ドラゴナーラ・リゾートはマルタ国際空港のほぼ北側、St.ジュリアンにある。このエリアはホテルも多くあり、レストランやカフェも多く、スーパーなどもあって滞在するには便利。ウェスティン・ドラゴナーラのすぐそばにカジノもあって、深夜までカジノに行き来する人々で騒々しかった。湿度が低くカラッとしてるので、夜は窓を開けて眠りたかったけれど、泊まった部屋がホテルの3階でうるさくて困った。
ホテルの食事はマァマァだったけれど、初日の夕食だけホテルで摂って、あとは全て町に繰り出した。近くにあるヒルトンホテルの前を少し下ると左手にハーバーに行ける道があって、そこに美味しいお店が集まっていた。
 
上の写真の右側に黒字に白抜き文字の看板のお店が現地の人に勧められたイタリア料理のお店サレ・ペペ。美味しかった。そして写ってないけど上の写真の左側、サレ・ペペの向かい側にZENという日本料理屋があった。マルタは日本にクロマグロを輸出してるから、ってことでここでお寿司を食べた。海外のお寿司はシャリが今ひとつなんだけど、予想に反して美味しかった。

マルタ島は日本の徳之島とほぼ同じ面積(徳之島の方が若干広い)。そんな小さな島(=国)に、世界文化遺産が多く存在する。知識詰め込んでプラプラ好きに廻るのも楽しそうだったけれど、最初は勝手も分からないからとガイドさんをお願いした。
聖ヨハネ大聖堂騎士団長の宮殿、ハイジャーム神殿などは面白い話をいっぱい聞けて大正解だった。町の歩き方やバスの乗り方、タクシーのつかまえ方などを教えてもらって、後日はイムディーナ(Imdina)やバレッタなどには、バスに乗って行ってみた。
首都でもあるヴァレッタへ向かうバスは5分おきくらいに来るのだけど、イムディーナ方面行きのバスは30分に1本程度しか来ない。イムディーナへ行こうとしたとき、30分以上待ってバスが来たのでバスの運転手に行き先を確認したら反対方向だという。
 
再度、道の反対側に渡って待つこと30分以上。やっとバスに乗り込みイムディーナまでは約1時間。しかもバス内に表示される文字がマルタ語で読めない(T_T)。運転手さんにお願いしてイムディーナに着いたら声をかけてもらい降ろしてもらった。

世界文化遺産であるヴァレッタの町は、かつて訪れたキューバのハバナと雰囲気が少し似ていた。バレッタの方が町並みは断然綺麗だけれど。ヴァレッタはマルタ一番の観光地ってこともあって、土産物屋も多く人も多かった。
喧噪溢れるヴァレッタが首都になる前はイムディーナが首都だったそうな。ヴァレッタとはまるで異なり、迷路のような細い道で縦横に結ばれるイムディーナの町は、時間が止まったようにひっそりとした町だった。
このイムディーナの町にも大聖堂があって、観るに値するはずなんだけど、残念ながらバス搭乗に無駄な時間を費やしてしまって、到着したらすでに閉館時間だった。このイムディーナで夕食を、とも考えていたのだけれど、帰りの事を思うとちょっと不安でタクシーでStジュリアンに戻った。イムディーナからStジュリアンまでタクシー代€25だった。
 
タクシーの事を書いたのでマルタの交通機関について。マルタでの移動はバスかタクシーのみ。タクシーは流しは基本的にいない。タクシー乗り場に行き、行き先を告げて運転手と交渉する。ぼったくりもいるそうだから、事前におおよそのタクシー代を調べておくといい。私はホテルのコンシュルジュから情報を得た。バスは1日券と2時間券がある。1日券が€1.5。2時間券は€1.2。1日券を買うべき。チケットは運転手さんから買う。ペラペラなチケットを見せれば、その後何度でも乗降可能だ。
ハジャールイム神殿にも行ってみた。世界遺産であるのに、なんとも無防備というか柵も無く触ることも可能だった。監視カメラが付いたのは、地元の若者たちが酔って石碑を動かしたりしちゃったからだそうな。
ただ石が積み重ねてあるだけだ、という人もいるそうだが(私も最初はそう思った)、この巨石神殿がエジプトのピラミッドが建造されるずっと前、紀元前3000年頃に造られたと聞くと、その凄さがヒシヒシ伝わってくる。その時代に石に穴を開け日時計にしていたというから驚きだった。
 
出来ればマルタ島の北にあるゴゾ島にも行ってみたかった。この島にも見どころはたくさんあるようだ。船は頻繁に行き来してるので1日あれば見てこられるが、私たちにはその1日が足りなかった。そのゴゾ島とマルタ島の間にあるコミノ島にはちょっとだけ上陸した。人がいっぱい集まって来てた。
どこに行ってもそうだけど、3~4日でその地を見るには日数が足りない。東京見物だっていろいろ見るには1週間は必要だもんなぁ。
ワンポイント  
電圧は230V 50HZ。
コンセントは3穴タイプ
(ウェスティンはBFタイプだった)


独特のマルタ語が主体だけれど、英語が通じる。
チップの習慣あり。ほぼアメリカなどと一緒で、レストランでは総額の10㌫が目安。 
【アルバム】 
【ダイビング・ログ】  
7月18日
【ドラゴナーラ・ハウスリーフ】
気温:30度 水底温度:24.8度 透明度:15m 潜行開始:16時32分 浮上時刻:16時55分 潜水時間:23分 平均水深:6.1m 最大水深:12.1m  快晴
※チェックダイブ。ポイント的には潜る価値なし。
 
7月20日
【コミノ島 P31】
気温:29度 水底温度:23.0度 透明度:20m 潜行開始:10時56分 浮上時刻:11時38分 潜水時間:42分 平均水深:13.6m 最大水深:19.1m  快晴
※沈船ポイント。同伴者が猛烈なエア食いで早々のイクジット。普通なら残してくれるだろうけど、残りたくもないポイントだった。
【コミノ島 サンタマリア・ケーブ】
気温:29度 水底温度:24.5度 透明度:25m 潜行開始:13時38分 浮上時刻:14時35分 潜水時間:57分 平均水深:7.0m 最大水深:12.8m  快晴
※ケーブ・ポイント。差し込む光が美しい。
7月21日
【マルタ島 フォルト】
気温:28度 水底温度:24.3度 透明度:15m 潜行開始:9時49分 浮上時刻:10時35分 潜水時間:46分 平均水深:11.0m 最大水深:15.4m  快晴
※海藻ユ~ラユラ、なポイント。ケーブもあってちょっと面白い。あと2本潜る予定だったけど、陸上の方が面白そうだったのでこの1本で終了した。
【総括】 
今まで訪れたことのある国の中で、このマルタは私のベストスリーに入った(ちなみに1位がキューバ、2位がこのマルタかベリーズ)。見るところがたくさんあって、何より食事の美味しいのが嬉しかった。これまたちなみに、キューバは食事は最悪。それでも何で1位かというと人々がとてもフレンドリーでダイビングも素晴らしかったからだ。

ここマルタはダイビングはイマイチだったなぁ。ショップによってはクロマグロの養殖場にも潜らせてくれるそうだが、今回利用したダイブワイズは出来なかったし、巨大なキリスト像が水深38㍍の海底に眠るポイントにも、ディープ・スペシャリティのライセンスを所持してないと潜らせて貰えなかった。。
きっと他のダイブショップを利用したら、もう少しダイビングも楽しめたと思うけど、何度も書いたように、この地は陸上の方がだんぜん楽しい。
地中海のど真ん中に位置し、それゆえに軍事的にも経済的にも重要な島であることから何度も侵略され、その度に新しい文化と血が残されてきた。それがゆえに独特の文化が残り、島には美しい女性がたくさんいる。何かと考えさせられ、思うところもたくさん残った島だった。

(2014年8月 記)