いつもの事だけれど、今回も行き先はカミさんに一任。だから“メナド”なんて地名を聞いても国が何処かもサッパリ判らなかった。偶然見ていたテレビで、数年前にシーラカンスが発見され脚光を浴びるようになったらしい…って事だけは判った。
まさかダイビングでそのシーラカンスに逢えるとは考えもしなかったけれど、夢があって何となく楽しそうだ。……そんな程度の知識だけをインプットして2005年7月12日の夜、私たちはインドネシアの北東に位置する島へと向かった。

予備知識を持たずに訪れたメナドには、まず魚影の濃さと魚種の多さに驚かされた。サカナ達もスレてなくて、ダイバーを怖がらない。
海面でコバンザメ2匹を従えて遊んでいるアオウミガメの姿を見つけ、下から眺めていたらコバンザメを従えたまま私の方へと泳いできてくれた。
まるでわざわざ私に挨拶でもするかのように寄ってきてくれたのだが、彼女(♂?)は私のことなど眼中に無いのだ。

ここは周辺だけでも30以上ものポイントがあって、マクロからワイド、ドリフトにレック・ダイブと、様々なダイビングが楽しめる。私は今回、都合11本潜ったけれど、全て趣の異なるダイビングだった。
ここ、メナドにきたらとことん潜ることが最高の選択だろう。
実はメナド行きを決めた数日後、テレビでブナケンという島が紹介されていた。何でもシーラカンスが見つかったとかで、日本の調査隊がシーラカンスを探しに行く…、という内容だった。何の気なしに見ていたのだが、後日、私たちが泊まるメナド島からボートでわずか10数分という近さだと知り驚いた。

インドネシア・メナドへは残念ながら日本からの直行便は無い(右のマップではいかにもあるようだけれど…)。インドネシアのジャカルタかデンパサール、もしくはシンガポール経由で行くしかない。

私たちは日程の関係、及び好みもあってシンガポール・エアラインを使用した。シンガポールのチャンギ国際空港で乗り換えだ。
日本からはシンガポール行きの便は多いので、こちらの方が日程を組むには便利のようだ。
シンガポールからはシルク・エアーに乗り換え、メナドまでは3時間ほどだ。
宿泊は「サンティカ・メナド」というホテルを選んだが、メナド空港からこのホテルまでは車でデコボコ道を約50分の道程となる。


今回、チャンギ国際空港の大きさや設備に驚かされたので少し紹介させていたく。この空港の広さは成田空港の2倍はあるのではないだろうか。今までミクロネシア行きではグアム空港のロビーで 寝泊まりしたけど、今回はチャンギ国際空港内にホテルがあると聞いたので、トランジットまでの数時間をそこで休むことにしていた。ところが到着ゲートからホテルまで10分近く歩くのだ。
ホテルがある事にも驚いたけれど、そのホテルへ向かう途中には免税店やコンビニ、軽食はもちろん寿司屋にマッサージ、無料のミニ映画館、果てはフィットネス・ジムまである。
トム・ハンクスの映画『ターミナル』じゃないけれど、ここだったら生活するのに困ることはまず無いだろう。私たちが空港内で利用したホテル(写真・右)は、
時間単位での利用だ。もちろん、バス&シャワーも完備している。1時間あたりいくらだったのか忘れてしまったけれど、翌朝の快適さはロビーで寝るのとは段違いだ(^_^;;;。
しかし、この空港だったらロビーでも快適に眠ることも出来そうだ。

写真左上=空港内のロビー
写真右上=免税店や土産屋が並ぶショッピングアーケード
宿泊したホテルの室内。少し狭いけれど設備は万全 映画館。50人ほどしか入れないけど無料は嬉しい 無料のインターネットも空港内そこら中に 生バンドの入っているカフェもあって楽しめる


メナドの街は騒然として活気も溢れているけれど、宿泊したホテル『サンティカ』周辺は何もない。街までは車で約40分ほどかかる。タクシー(下写真)だと60,000RP(ルピー)が相場(当時のレートで約750円)だそうだが、外国人(特に日本人?)となると吹っ掛けられる。英語をしゃべれない人もいるらしいので、自力交渉はなかなか難しい。仮に英語を理解していても、かなりクセがあって判りづらかった。 空港で地元のおじさんに話しかけられた際に、まるで意味が判らなかったので「私は日本語か英語しか話せません」と言ったら、どうも英語で話していたようで、嬉々として更に話し出した(^_^;;;。聞き取りづらく、慣れるまで時間がかかった。RとAの発音が独特なのだ。
一方、小型のバス(下・右写真)は決まった区間を走っていて一律料金。こちらは区間内1200RP(約15円)だ。
街の衛生状態はあまりよろしく無さそうだ。国立病院があるらしいけれど、入院するともっと悪くなりそうな病院だとか。
町中を見ても、風雨を避けることも困難そうな家々が多かった。道端に並ぶ屋台に人が集まっていたけれど、大抵のものは食す事が出来る私も、流石に食べる勇気は沸いてこなかった。ホテルの食器ですら完璧に洗われていないのだから、
町中の食器は洗ってなくても不思議はない。

立派なショッピング街もあって、綺麗な店舗が沢山入っていたけれど、偽物がまかり通っていた。それでも物価は流石に安かった。現地ではインフレで何万という単位でお金が動いているけれど、日本円に換算すれば激安だ。

川縁に民家がギッシリ
海鮮料理を出す「ウィスタバハリ」(下写真)という街で最高級のレストランへ総勢7人で食事をしに行った。水槽の生きた魚介類を選んで好みの調理をしてもらう。ここでマングローブガニなど結構食べて飲んだのに、一人あたり日本円換算で1500円程度だった。日本だったら1万円近いだろう。これでインフレだっていうのだから、驚いてしまう。

量り売りの香水。偽物陳列棚だ
しかも、ビールが少し温かった事を除けば味は最高だった。
街に比べればホテルの食事はバカ高い。街の2〜3倍といったところか。利用した「サンティカ・メナド」には2カ所食事をするところがあった。そのメイン・ダイニング「Big Tree」はホテルの高台にあって景色がいい。一杯やりながら夕陽を眺め、食事が出来る(左下写真)。

このホテル内に今回お世話になったダイブ・ショップ「タラサ・ダイブセンター」もある。
朝8時に1本目のダイビングへ出かけ、11時頃一旦戻り2本目からの参加者をピックアップ。12時過ぎに再び戻りショップで昼食。その後に3本目を潜り4時頃戻ってくる。全てボートダイブで、艀まで380mの桟橋を歩いていく(トップ写真)。


ダイビングはメナド周辺及び目前のブナケン島、シラデン島、メナド・トゥア各島の周辺を主体に潜る。
私は到着した翌日の1本目はブラック・ロックと呼ばれる砂地のポイントを潜った。海底にへばりついての小物探索で、ヤップ島のガーデンイール・フラッツを彷彿とさせるポイントだったけれど、こちらの方が更にマクロだった。体調2cmほどのボロカサゴの幼魚や1.5cmほどのクモガニなどに逢える。
続いて潜ったブナケン・ティムール(No.15)はまったりと潮の流れに身を任せるドリフト・ダイブ。そしてエアーも減ってイクジット前の安全停止では、光を浴びながらコーラル・フッシュと共にしばらく漂っている。
私は行く機会が無かったけれど、右のマップ以外にも島の東と北側にもっと手つかずの自然が残るポイントがあるそうだ。東のレンベ島へは車で約40分、そこからボートで10〜20分の範囲に16ほどのマクロが主体のポイントがあるそうだ。
北のバンカ島方面へはボートでの1日ツアー。ワイド&マクロ両方が楽しめるとのことだ。

(ポイントマップはタラサ・ダイブセンターHPより無断借用)
●7月14日(木)
1本目=メナド「ブラックロック」 EN=8:32 EX=9:35(63分) 最大水深=21.4m 平均水深=10.8m 透明度=25m 水温=30度
チョウチョウコショウダイ赤ちゃん チンアナゴ ナポレオンスネイクイール ツマジロモンガラ スジモヨウフグ
コロダイ幼魚 フウライウオ モンダルマカレイ ボロカサゴ ツノカサゴ幼魚
イッポンテグリ幼魚 カミソリウオ ニシキテグリ ヘコアユ ほか出会った魚達=スパイダークラブ、トビヌメリなど  
2本目=メナドトゥア「タンジュン・コピ」 EN=11:00 EX=12:03(63分) 最大水深=29.7m 平均水深=10.8m 透明度=35m 水温=29度 
メガネモチノウオ イソマグロ クチナガイシヨウジ アヤコショウダイ ニシキヤッコ
クロハコフグ アカククリ ハタタテハゼ ササムロ ほか出会った魚達=カスミチョウチョウウオ、ヘラヤガラ(yg)、ムスジコショウダイ
3本目=ブナケン「ブナケン・ティムール」 EN=14:36 EX=15:40(64分) 最大水深=24.3m 平均水深=9.8m 透明度=25〜35m 水温=29度 
カエルアンコウ シマウミヘビ ポスズスコルピオンフィッシュ カスミチョウチョウウオ ニシキヤッコ
●7月15日(金)
1本目=シラデン「シラデン・サラタン」 EN=8:31 EX=9:32(61分) 最大水深=27.5m 平均水深=13.3m 透明度=35m 水温=28度
アンナウミウシ ホホスジタルミ幼魚 シンデレラウミウシ ゴシキエビ ハナダイ
アネモネフィッシュ スパインチークアネモネフィッシュ ミナミハタテダイ ツノハタタテダイ ほか出会った魚達=メラネシアンアンティアス、アカネハナゴイ、オヤビッチャなど
ブナケン島は国立公園のため、島への上陸もさることながら、周辺でのダイビングやスノーケリングでも入場料が必要(1日50,000RP、1年150,000RP[約1800円])となる。支払い完了するとタグが支給される(右写真)ので必ず目立つところに付けておこう。この日、イクジットしたら水上警察らしきボートが横着けしていて、しっかりチェックされた。ちなみにタグのイラストはシンデレラウミウシ(上段中央写真)。愛嬌のあるウミウシだ。ムーミン谷の住人達にこんな姿の仲間ががいたような気がする。
2本目=ブナケン「レイモンド・ポイント」 EN=11:04 EX=12:07(63分) 最大水深=27.2m 平均水深=13.7m 透明度=30m 水温=29度
アカモンガラ アサドスズメダイ ブルースポテッドスティングレイ ミナミハコフグ幼魚 イナズマヤッコ
キンギョハナダイ ベニハナダイ テングカワハギ ホホスジタルミ幼魚 ほか出会った魚達=ポスズズコルピオンフィッシュ、ツムブリ、アカフチリュウグウウミウシ
3本目=メナド「ティウォホ」 EN=14:19 EX=15:27(68分) 最大水深=16.1m 平均水深=8.3m 透明度=20m 水温=30度
シマキンチャクフグ ソリハシコモンエビ デバスズメダイ ハナヒゲウツボ アブラヤッコ
ゴンズイ ニシキフライウオ イシヨウジ トサカリュグウウミウシ
●7月16日(土)
1本目=ブナケン「マイクポイント」 EN=8:43 EX=9:43(60分) 最大水深=35.7m 平均水深=13.8m 透明度=35m 水温=29度
ニチリンダテハゼ クロモンツキ オウギチョウチョウウオ アヤコショウダイ スパインチークアネモネフィッシュ
ソウシハギ ホホスジタルミ チータウミウシ ハタタテハゼ ほか出会った魚達=クダゴンベ、ヒトズラハリセンボン、モンガラカワハギほか
2本目=ブナケン「レクアンU」 EN=11:00 EX=12:00(60分) 最大水深=25.7m 平均水深=12.2m 透明度=40m 水温=28度
テングハギモドキ クダゴンベ モンガラカワハギ ネッタイミノカサゴ ホワイトチップシャーク
チョウチョウウオコショウダイ マダラタルミ ほか出会った魚達=カスミアジ、アヤコショウダイ、アカモンガラ、アカククリの群れ、アカモンガラ、ハナゴイ&ハナダイの群れほか
3本目=ブナケン「ムカカンプン」 EN=14:25 EX=15:29(64分) 最大水深=21.0m 平均水深=12.2m 透明度=25m 水温=28度
ヒレナガスズメダイ オトヒメエビ バイカラードティーバック ドクウツボ
アオウミガメ キンギョハナダイ バブルコーラル ほか出会った魚達=マダラタルミ、ウメイロモドキ、クマザサハナムロ、クロハコフグほか
●7月17日(日)
1本目=ブナケン「フクイ・ポイント」 EN=8:55 EX=9:59(64分) 最大水深=27.6m 平均水深=13.9m 透明度=30m 水温=30.4度
コイボウミウシ ヒポカンポスポントヒ オニテングハギ ムスジコショウダイ オオシャコガイ
ホソフエダイ ヒポカントスポントヒ
(写真上段・左から2つ目)。メナドに来て初めて聞いた名前だ。写真の個体は体長およそ3_ほど。教えてもらっても、指先に居るはずの彼を直ぐには見つけられなかった。ピグミーと異なり、ヒラリヒラリと海草を移り渡るので、その動きで私にも視認出来た次第。それにしてもあまりに小さくて、撮影できたか不安だった。あまりに小さくてカメラのモニターでは確認できないのだ。5カットほどシャッターを押し、上の1カットだけが写っていた。
2本目=メナド「ガーベット・ポイント」 EN=11:19 EX=12:23(64分) 最大水深=29.4m 平均水深=11.19m 透明度=25m 水温=29.3度
ピグミーシーホース クロシタナシウミスズメ モクズショイ イソギンチャクモエビ アミメフエダイ
エレガンススクワットロブスター メラネシアンアンティアス ネッタイスズメダイ ほか出会った魚達=ガラスハゼ、ツノダシ、スダレチョウチョウウオ、ウメイロモドキ
ダイビング雑記
メナドは冒頭にも書いたように、とにかく魚種の豊富さが最大の魅力だと思う。魚影も濃い。
体長3_に満たないようなレアな魚達に逢わせてもらい、私のベスト5に入るダイビング・スポットとなった。

私が訪れた時期は乾期でダイビングには最高の季節…。しかし、たまたま私は1日だけしかスコールに見舞われなかったけれど、ほとんど連日雨に降られていたらしい。温暖化の影響だと思う。
たまたま1度だけ遭遇したスコールは、南の島特有の豪雨で直接肌に当たると痛かった。雀たちもダイブ・ショップに大挙して入ってきて雨宿りしていた。
海の中は未だに自然が残っていると感じたけれど、この温暖化はきっといつかは世界中の自然を破壊していくのだろう。その温暖化は私たち自身が生み出しているのだ。
タラサ・ダイブセンターの集会所兼食堂。スタッフの数が多いのにはビックリした。私が利用していた時期のゲスト数より多かった。総勢40人以上いるらしい(;^_^A クルー達は少々シャイだけど気さくだし、ガイドの面々はピンポイントで希望の魚に逢わせてくれるプロ集団。特に唯一の日本人・エリさんには通訳までしてもらい助かった。 5日間滞在したけれど、もっと居たかった。ここはポイントが多く、魚種も豊富なので5日程度では時間が足りない。2週間位は滞在しないと帰国して欲求不満が残る。