ランギロア島空撮

かれこれ6年前、「天国に一番近い島」という言葉に惹かれて(決して映画にではありません、念のため)、ニュー・カレドニアのウベアという島を訪れたことがあります。誰もいない何処までも続く浜辺は確かにそのタイトルそのものでした。

しかし今回訪れたランギロアという島は、天国に“近い”ではなく、まさに“そのもの”のような島でした。幅がわずか1〜200bしかないリング状の島は椰子の木が生い茂り、限りなく美しい海と人を恐れない魚たちがいました。

いえ、それしかないのです。
何もない…ということが、どんなに贅沢なことかを教えてくれた島でした。
ダイビング通算100本目のメモリアル・ダイブでもあった今回のトリップは、忘れ得ぬものになりました。
訪れた地で気に入った土地は、特に思い出深い場所は、その思い出をずっと残すために二度と訪れない…というのが私の主義だったのですが、この島は別格になりそうです。出来うることなら、いつの日かまた再訪したい島となりました。

飛行機から見たランギロア。ここからでも海の透明度が判るのがスゴい! 投宿したホテルのベランダから眺めた景色です。向こうに見えるのは桟橋。 海は見事に3色に分かれていました。波打ち際はまるでプールのようです。 毎晩お世話になったレストラン・バーのオープン・テラス。流れ星が酒の肴!
植え付けられたように等間隔で並ぶ椰子の木が調度よい木陰を。 ビールの酔いと木陰とそよ風が心地よい眠りを嫌がおうにも誘います。 おなじみ“スイコテ”こと水上コテージ。私たちには無用の長物です。 日がな読書にふけるトップレスの美しい女性の姿もありました。
茜百景のページにリンクしています
イルカ達の遊び場、ティプタ・パス。華麗なジャンプは1頭しか見れなかった。 ダイビング後のまったりとした倦怠感の中で夕景は最高のマッサージです。 ベストの夕陽には会えなかった今回のトリップ。でもやっぱり綺麗だなぁ。 ランギロアの空港。子供たちが裸足で遊び回るのどかさです。
ツアモツ諸島

ランギロア島全図
(イラストは上下共にタヒチ観光局より拝借)
ランギロアは南太平洋に位置するツアモツ諸島(左上段イラスト)の中の一つです。周辺にはティケハウ、ファカラバ、マニヒなどダイビングには最高のポイントを有する島々があります。

この島に行くには乗り継ぎの時間も含めて約14時間かかります。日付変更線を越えるので、昼前の11時30分に成田を出発してランギロア到着は同じ日の朝8時という不可思議な行程になります。
タヒチのパペーテへ向かい、そこでトランジット。パペーテからランギロアへは約1時間です。
当日、ランギロアへ向かった日本人は私たちを含めて全部で8人でした。ほとんどの日本人客はパペーテに滞在するかボラボラ島へ向かったようでした。

私は以前、片道8時間弱のハワイに懲りて「二度とハワイは行かない! 飛行時間は7時間以内じゃないとダメ!」と宣言していたので、今回の旅行ではどうにかなっちゃうのでは…と不安でした。ところが意外と楽な空の旅で、私は到着したその日にダイビングが出来ました。
何故、それほど楽だったのか判りますか? 利用した航空会社エア・タヒチ・ヌイの飛行機の座席間隔が広いのです。
身体の大きな人が利用することが多いからでしょうか、エコノミー席でも充分に足が伸ばせるのです。これは非常に助かりました。敢えて何点を言うなら座席の位置が高いことです。
リクライニングすると足が床に届きませんf(^_^;) 自分の足が短いのですから座席に文句を言っても始まらないのですが、あと5センチ座席高を低くしてくれれば、と思います。
結局、機内持参のデイパックを足元に置いて、足台変わりにして眠りに付きました。

今回の旅行は当初、バヌアツのサント島を計画していました。
沈船ダイブの後の安全停止水域で、ボロス(写真)と呼ばれる200s超級のハタに会えると聞いたからです。

ところが、いざチケットを求めようと現地情報に詳しい旅行代理店を訪ねた際に「ボロスはどうも居なくなってしまったようだ」との言葉。確かにバヌアツのダイビングは沈船ダイブがメインではあるけれど、サカナ好きの私としては、ダイバーに身体をすり寄せてくる200sもの巨体のハタに会って見たかったのです。折角行ってもボロスに会えないのなら、今回は別の島に行ってみよう…とランギロア行きが決まったのでした。

さてランギロアの話題に戻りましょう。ランギロアに到着して、直ぐに、私たちは二人乗り用のオートバイを借りて、ビールや軽食の買い出しにアバトルの村まで出ました。ホテル・キアオラから空港を過ぎ、走ることおよそ8qほど。直ぐに村の端であるアバトルのパスに行き着きます。その空港とアバトルのパスを結ぶ、わずか数qの間にレストランやペンション、黒真珠の養殖所などが集まっています。反対側のティプタのパス側にも雑貨屋さんとペンション、ダイブ・ショップに軽食屋さんがありますが、数は少ないです。
折角バイクまで借りて行ったアバトルの村でしたが、私が到着した5月1日はメーデーなのかどういう訳か、アルコール類は売ってもらえませんでした。ちなみに道は1本しか無いので迷う事は絶対にあり得ません。それと、自転車でも行けるとは思いますが、片道30分はかかると思います。日射病にはくれぐれもご注意のほどを。
ランギロアは世界で2番目に大きな環礁を持つ、細いリング状の島です。
ですから、島で摂取出来るものは限られています。飲み水さえも溜めた雨水を濾過して使用していました。ほとんどの物資が本島のタヒチから輸送されてきます。もともとタヒチの物価が高いので当然ですが、この島の物価の高さには驚きました。
現地の島民たちがよく利用しているという食堂に入ったのですが、シャオメンと呼ばれる焼きそばとハンバーガー、そしてコーラを注文して1750フラン。日本円換算で約2000円です! ビールも350_g缶で約500円。ただしどこのお店に入ってもパンだけはジャンジャン出してくれるのはありがたかったです。私たちはホテル・キアオラに泊まりましたが、賄い付きのペンションも何軒かありました。それと、この島は外からの野菜や果物などの植物類の持ち込みを規制しています。物価が高いからといって、安易に日本から生野菜を持ち込む事は避けた方が賢明です。
島に2件ある雑貨屋さんの内の1件。中から声は聞こえるのに入り口はどこ? ランギロア唯一と言っていい生産工場。ここは黒真珠の養殖所です。 おしゃれなオープンカフェ「ル・カイカイ」。どういう意味なのか聞けばよかった。 「ル・カイカイ」の美人シェフ。料理の味も抜群だが、手際の良さには驚き!
「バイマリオ」。シェフ自らが海で採ってくるというシャコ貝のグラタンはなかなか。 素朴な「バイマリオ」お店の入り口。シェフは380sのマーリンを釣ったと自慢。 フランス領だけあってワインは豊富で美味。ついつい飲み過ぎて痛風が(TT) レンタ・バイクで買い出し&昼食。焼きそばとバーガーを食べた「オーギュスト」

※ランギロアの食事レストラン情報は現地に住む西村さん夫妻のサイトがとっても親切です。http://chez.mana.pf/~masaharu/index.html

ランギロアのダイビングは、私にとってはかなり不思議なダイビングでした。不思議というか豪快というか、とにかく初体験のダイビング・スタイルだったのです。フランス式のダイビング・スタイルというのも初めてでしたが、それは別にまごつくこともありません。
どこが不思議かというと、ほとんどのダイバーがすぐそばの珊瑚棚に美しいサカナ達が乱舞していても、ほとんど目もくれないのです。それはお目当てがハンマーヘッドやマンタ、イルカやバショウカジキのような大物だからです。

今回のダイビングで、私は2頭のイルカと水中で出会うことが出来ました(水面では何度も見かけられました)が、機嫌が悪かったのかあっという間に去って行ってしまいました。その一瞬を見つけるためには小魚などに目を奪われているわけにはいかないのです。ほかの彼ら(小魚)は何時でも会えるから…という感じです。
不思議ダイビングの二番目は、ポイントの数です。世界で二番目に大きな環礁でありながら、ダイブ・ポイントは2カ所のパス、アバトール・パスに二つ、ティプタのパスに七つしかないのです。
私はランギロアで都合11本潜ったのですが、その全てがティプタ・パス。しかもポイントは大きく捉えれば外洋、外洋のリーフ、パス、そしてイン・リーフの4カ所だけしか潜っていません。
ランギロアのダイビング・スタイルは、潮が停まっている時と引き潮の時間帯は外洋で大物をひたすら待つか、
外洋リーフの散策。潮が満ちていく時は、パスに流れ込む潮流に身を任せた時速20ノットの高速ドリフト・ダイビングです(時速約37q!)。
その日の潮の流れ具合でパスの西側を流すか、東側を流すかドリフトのコースも変わりました。

だから、1日に3本も潜れば二日目にしてポイントを把握出来てしまいます。正直言って二日目の晩には「明日のダイビングはキャンセルしようか…」と思いました。ところが同じポイントなのに、日に日に面白さが増してくるのです。
同じポイントなのに何故か新鮮さを感じるのです。
それは、潜る本数が増えるほどに強くなってきました。“一発勝負の大物狙い”。それがランギロアの魅力のような気がしています。
私は会うことが出来ませんでしたが、体長3bを超すバショウカジキが背ビレを怒らせてダイバーを威嚇しながら目の前を横切っていく……。それがランギロアの魅力です。サメたちの乱舞やダイバーと遊ぼうと寄ってくるイルカ達……。ハンマーヘッドにマンタ、マダラトビエイの編隊。それがランギロアのダイビングのようです。徹底して大物に遭うダイビングの醍醐味を味わうのが、ランギロアの海を楽しむコツのようです。
5月1日(土曜日)

1本目=ティプタ・パス (ドリフト) 天気:晴れ 
   開始:13時29分 浮上:14時19分 (50分) 最大水深:33.5b 平均水深:16.4b
   水面:29度 水底:29度  透明度:25b

   見られたサカナ=ホワイトチップフシャーク、バラクーダ、マダラトビエイほか

5月2日(日曜日)
1本目=ミオリエンヌ  天気:快晴 
   開始:7時49分 浮上:8時39分 (50分) 最大水深:25.5b 平均水深:14.1b
   水面:28度 水底:29度  透明度:20b
2本目=ティプタ・パス(外洋ドリフト) 天気:晴れ 
   開始:9時57分 浮上:10時42分 (45分) 最大水深:29.6b 平均水深:11.4b
   水面:29度 水底:29度  透明度:25b
3本目=ティプタ・パス(ドリフト) 天気:快晴
   開始:13時36分 浮上:14時21分 (45分) 最大水深:31.6b 平均水深:15.5b
   水面:29度 水底:29度  透明度:30b
   見られたサカナ=ハンマーヘッドシャークグレイリーフシャーク、マダラトビエイほか
5月3日(月曜日)
1本目=ミオリエンヌ (リーフ)  天気:快晴   祝!100本ダイブ
   開始:7時41分 浮上:8時32分 (51分) 最大水深:26.5b 平均水深:15.3b
   水面:28度 水底:29度  透明度:25b
2本目=ミオリエンヌ (リーフ) 天気:快晴 
   開始:9時47分 浮上:10時38分 (51分) 最大水深:21.4b 平均水深:11.3b
   水面:29度 水底:29度  透明度:30b
3本目=ティプタ・パス(ドリフト) 天気:快晴
   開始:13時38分 浮上:14時31分 (53分) 最大水深:26.7b 平均水深:12.1b
   水面:29度 水底:29度  透明度:25b
   見られたサカナ=ブラックチップシャーク、ナポレオン、イルカ、カスミアジほか
5月4日(火曜日)
1本目=ミオリエンヌ (外洋)  天気:快晴 
   開始:7時42分 浮上:8時36分 (54分) 最大水深:25.7b 平均水深:15.2b
   水面:29度 水底:29度  透明度:25b
2本目=ミオリエンヌ (リーフ) 天気:晴れ 
   開始:9時52分 浮上:10時51分 (59分) 最大水深:27b 平均水深:12.1b
   水面:29度 水底:29度  透明度:30b
3本目=ティプタ・パス(ドリフト) 天気:快晴
   開始:13時42分 浮上:14時33分 (51分) 最大水深:29.4b 平均水深:14.5b
   水面:29度 水底:29度  透明度:30b
4本目=アクアリウム  天気:快晴(体験ダイビングに同行)
   開始:15時36分 浮上:16時19分 (43分) 最大水深:10b 平均水深:3.6b
   水面:29度 水底:29度  透明度:20b
   見られたサカナ=ナポレオン、イソマグロ、イルカ、カスミアジ、ツムブリほか
ショップはホテル「キアロア」内にあるブルー・ドルフィンズにお世話になりました。
(2014年、ダイビングショップはトップダイブ−バティスに経営が変わっていた)